私の転職活動からの経験値 12 2025/6/15
ところで日本はいつごろから労働市場の流動性が高まったのでしょうか。見方を変えれば、非正規労働者の占める比率が高まったのはいつ頃だったでしょうか。それまでの日本企業は、従業員こそ宝という理念があったと思いますが、いつのまにか株主こそが最重要という流れになってきました。欧米化といえばそれまでですが、欧米の伝統的な企業は結構従業員を大事にしていると思います。われわれ日本人は、欧米の企業は従業員には冷淡で淡白なものであり、解雇、人員整理は当然というふうに見聞してきましたが、実はそうしたことを実際に経験したり実践したりしたわけではなく、メディアや専門家などの話などからああそうかと思い込んできた節があります。この構図は、少年のスポーツ指導体制に通じるように見えます。少年たちを指導する大人たちは、その種目を自分自身が経験していない場合が多く、誰かの話やテレビなどのスポーツドラマを視て推測しながら指導している場合が多いようです。そうすると、やたら厳しい指導になったり、思い込みであったりで、非常に純粋に神経質になるほど真面目に取り組むようになる傾向があるようです。人事労務においても同じことがいえそうで、いまや日本企業の人事政策が一番純粋に整理や解雇を実施するようになっているのではないかと思われます。
Japan as No.1という書籍がありました。1979年に出版されたと記憶しています。私も、そのころ20代後半ぐらいでその本を読んで非常に誇らしく感じたことを覚えています。重厚長大産業は勿論のこと、電子産業においても、半導体関連でも、まして自動車などすべての産業が絶頂期を迎えつつあった頃でした。私にとって忘れがたいことの一つに、欧米の電器産業がテレビから撤退したというニュースがありました。あれから40年ぐらいだって、今は日本の電器産業からテレビ製造が消えるという時代になりました。その頃のもう一つの思い出は、もはや欧米から学ぶことは何一つないなどと己惚れた意見がありました。そんなことはないのです。我々は、謙虚さを忘れて奢っていたのです。いい気になっていたのです。欧米は、日本より早く産業の衰退、競争力の弱体化に対峙しており、人口減少と社会の活力を失いつつあったのですが、それらをどのように克服したのか、進路を変更したのかという点をもっと学ぶべきだったのです。
話を本題に戻します。皆さんは職を失い(或いは失うかもしれない)、次の舞台を探すことになったわけですが、今まで割と恵まれた環境にいたことを自覚することから始めましょう。中には、バブルが弾けた就職氷河期に当たり、大変な苦労をした人もいるかと思いますが、そうした激戦を勝ち抜いてきた皆さんは元来優秀な素質をお持ちだと思います。ですから、中高年になって再び職を探すことになったことを嘆いても始まりませんから、自分を見つめなおし、不足なこと強いことを洗い出して戦いに臨みましょう。
日本の産業の話に再度戻しますが、日本の製造企業は生産を海外に移して日本国内では研究、開発に専念するという方針をしますが、私は、これは無理と思っています。現場での経験があるからこそ、改善、工夫、ひらめきがあるのであって、若い時から頭を使っただけでは何も生まないと思います。学校でも、どこでも考えろ、自分の頭で考えろという指導をしますが、考えるための知識と経験がなければ何をどのように考えるのかわからないのではないか。やはり、自分の手と足で覚えたものを土台にしていないと何も生まれないのではないかと思います。皆さんには、それがあるのです。実際に身についた経験値は強い味方です。